wired raven

文字通りの日記。主に思ったことやガジェットについて

works

とある博士の手記

感情に関する機能を削除すると決めるのに時間はいらなかった。 必要な条件に感情は入っていなかった。 そして、彼女の役割において感情と言う要素はきわめて危険だ。 人間ですら感情を完全に御することはできない。 だが、人間には感情のバランスを崩したと…

混戦(17)

ミサイルを振り切ろうにも機体の推力があがらない。 田辺は咄嗟に生きている機体左にあるシールドジェネレータを作動させる。 さらに壊れたシールドジェネレータ分のエネルギーを送り込む。 設計限界を超える強度の光の防壁がブラック・アウトの左側面に発生…

「ねぇ」 瞬子は後ろで背を伸ばして本棚から本を取ろうとしているカシスに声をかけた。 白の少女が動きを止める気配。 「何?」 少し背伸びをして、右の手で本を引き出しながらこちらに顔を少し向けているのだろうか、と黒の少女は考えながら、 「人外のキャ…

目幅の血涙とはさよならしたらしい

「天気予報は雨になると言っていたっけ」 アズは灰色の雨雲を見上げて言った。 「先輩も抜けてるところがあるんっすね」 横にいる田中が言う。 「僕だって人間だよ。まぁ、アンドロイドもこういうミスをするが」 「俺、アズ先輩ほどアルギズ先輩のこと知らな…

混戦(16)

壁のように目の前に立ちはだかる弾幕にも機体が通れるだけの隙間がある。 黒の機竜はその隙間に一直線に飛び込む。 上下、左右に隙間を通り抜ける機体は大きく揺れる。 弾幕を切り抜けると、リヴァイアサンの右側面が見えた。 弾幕が止んでいるのは 「シール…

ドライブ

運転席に座る一騎と景色を交互に見る。 どうやら、隣にいる彼は同じ道を通っていることに気づいていないようだ。 本来、左折するべきところを右折したのが原因だろう。 大きな円を描くようにまた、戻って来てしまった。 エリスは状況を整理しながら、戻るル…

続・熱と咳と冷たさと

安静にしていたのが功を奏したのか、その日の夕方には瞬子の熱は平熱の36度まで下がっていた。 熱を測り終えると瞬子はカシスに言った。 「ありがとう」 「困った時はお互い様でしょう」 「そうね」 瞬子は起こしていた上半身を横たえて、 「さっき、お母さ…

熱と咳と冷たさと

洗濯物を干し終えて、居間に戻るとテーブルの上の携帯電話のLEDが点滅していた。 同居している誰かが忘れ物でもしたのだろうか、とカシスは携帯電話を開いて内容を確認した。 差出人は別の棟に住んでいる友人の少女からだった。 風邪で寝込んでいるから今日…

混戦(15)

苛立ちに似た感覚を覚えながらケイは突撃してくる黒の機竜に連射撃を行う。 全武装で射撃しているのにも関わらず、攻撃は一つも当たっていない。 大して機体の性能は生かせない癖に英雄面して、友軍がついてきて当然という態度が気に入らない。 あの赤の機兵…

混戦(14)

機体の操作は田辺に任せてエリスは敵への攻撃手段を考えていた。 敵は超長距離・超火力の空中要塞だが一つだけ弱点があった。 装甲が薄く、通常の空対空ミサイルでもダメージを与えられるのだ。 しかし、シールドを装備しているので、装甲に攻撃するにはまず…

混戦(13)

ブラック・アウトが射程にとらえるよりも早く、相手の拠点防衛用機竜が攻撃を仕掛けてきた。 こちらに向かって飛来してくるのは16連の青の光だ。 田辺は右方向にブレイク。 だが、光も角度を変えてブラック・アウトに迫る。 蛇のようにしつこい奴だ、と田辺…

疑問

エリスと一騎の二人は一緒に行動することが多い。 多いだけですべての行動においてそうなのか、といえば答えはNoだった。 一緒にいるのが当然で、セットでない時は異常事態だと周囲の人間は認識いるようだ。 エリスにとってこの考え方は理解できなかった。 …

混戦(12)

紅蓮は機体を造反した部隊に向ける。 左右を見れば黒や灰、空の色の機兵が並び、上を見れば機竜隊がV字隊形で雲を引いている。 敵も機竜と機兵の混成部隊のようだった。 良く見れば新型の機兵も混じっている。 彼の乗っている機体よりも、機動性も高く航続距…

混戦(11)

『生きてるか、ブラック・アウト』 エクスカリバー2――ワイルドファイア――の問いに田辺は浅く息を吐いてから、 「生きてるよ。そっちはどうだ?」 『見ての通りだ』 「なるほど、元気そうだ」 並走する両機の後方、敵の機竜集団には球状の空間が生まれている。…

混戦(10)

手甲型の武器の中でアリウムはこぶしを強く握っていた。 ころりと態度を変えた相手が気にいらないのだ。 ぐちゃぐちゃにかき回して、気が済んだらそそくさやめる。 そういうプレイはオフラインのゲームでやるべきだ。 さらに彼女が気に入らないのは正面から…

対話(1) 準備

「チャットルームでこの家を再現すると言ってもどうするんだ?」 一騎はエリスに尋ねた。 「アンドロイド用ソフトウェア『Sight Hijacker』を使用する」 視界を乗っ取るとはどういうことなのか、と一騎が考えているのを察して、 「見ているものをそのまま、チ…

混戦(9)

スグリは各ギルドの魔術師を召集し、大規模攻撃魔術の準備を進めていた。 使用する魔術は空間をえぐり取る魔術だ。 有効半径がkm単位の為、地上絵のごとく魔法陣が描かれている。 その魔法陣の模様にそってエーテルを散布する機械と魔術師がある。 魔法陣の…

混戦(8)

彼の勘通り、彼女は見晴らしの良い丘の上にいた。 キャラクターの容姿が本人と同じだったのですぐにわかった。 全力で飛ばしてきた彼をケイは潤んだ瞳で迎えた。 「来てくれると思ってたよ、アズ兄」 それは兄が、ではなく恋人が来てくれたかのような雰囲気…

混戦(7)

オフィーリアとエプシロンの二人は地上の魔術師部隊の護衛にあたっていた。 彼らの頭上、はるか高い場所で敵と味方の機竜が戦っている。 時折、落下してくる機竜の残骸を銃撃や魔術で破壊するのが彼らの役割だった。 「あの声……」 無線から聞こえてきた敵の…

混戦(6)

『エクスカリバー1、後ろだ。何やってやがる!!』 エクスカリバー2が叫ぶ。 エクスカリバー1の後ろについているのはMD-35の改良型だ。 追尾性能の高いミサイルとシールドを貫通するエーテル凝縮弾を搭載している化け物。 『そのまま、直進だ。あたるなよ』 『…

混戦(5)

『敵、機竜群は第1世代から第2世代の機竜を改良したものと推測される。各機、油断するな』 新しい情報を入手次第、すぐに送信する、とオールシーイングアイ。 エクスカリバー1、エクスカリバー2は一度、補給のために空中空母に戻っていた。 「まさか、お前と…

混戦(4)

艦隊と合流する、とエリスは田辺に告げた。 「何とか間に合ったな……」 視界の一部を拡大してみると、確かに艦隊が見える。 運営直轄ギルド「エクセキューショナーズ」の所有する空中艦隊だ。 機竜や機兵の空母、艦首に主砲を有する戦艦、それらの中央に巨大…

混戦(1)(2)(3)

イルミネア大陸ノース・フォレストの北方120kmの海上。 海底地図コンプリートに情熱を燃やす男たちがいた。 彼らは攻城戦や各種生産活動、クエストなどよりもこの世界の海底地図作成に力を入れていた。 ギルドマスターにとやかく言われることもなく、ギルド…

ちょっと、爆弾おいていきますね

http://www.4shared.com/file/55557727/e7c56468/noname.html?dirPwdVerified=75609973

その翌日

今日の出来事を忘れないうちに書き留めよう、と瞬子は帰宅早々ディスプレイに向かった。 が、途中で寝てしまったらしく、起きた時には12時になっていた。 それも呼び鈴で目が覚めるという形だ。 慌てて扉を開ければ、 「あ、カシスちゃん」 「おはよう、瞬子…

ReSTARTER(7)

フレア1、ブラック・アウト共に機銃を発砲。 発砲と同時にフレア1は下、ブラック・アウトは上に回避。 互いに弾は外れる。 ブラック・アウト、重力を使って加速。 ヴェイパートレイルを残しながら、フレア1に機銃掃射。 フレア1はボードの前を掴み引き上げて…

ReSTARTER(6)

機体の表面温度が一瞬で1000℃を超え、黒の装甲が赤に変わる。 フレア1の爪が空けた穴から熱が侵入し、内部構造を破壊していく。 エリスは田辺との感覚共有を制御し、機体のダメージが彼に痛みとして伝達されないようにする。 『コントロールを寄越せ』 『ユ…

ReSTARTER(5)

音速超過の速度で距離をとりながら、フレア1は後方で火球に飲み込まれるブラック・アウトを見た。 あれで仕留められると彼は考えていなかった。 シールドにダメージを与えることが彼の目的だったからだ。 火球を突き破って、黒の機竜が姿を現す。 シールドは…

ReSTARTER(4)

ブラック・アウトの後部光学センサーが反転するフレア1を捉える。 前進を続けながら田辺はフレア1の機動性の高さを評価した。 人型の場合、腕や足を動かしたり、胴体をひねることで重心の移動ができる。 フレア1(のパイロット)はそれを良く知っている。 脅…

戦略再考

一騎は頭を抱えながら夜道を歩いていた。 自分の対応もだが、エリスの反応の方が気がかりだ。 あの反応は過剰すぎる。 それ以来、ずっと、エリスは黙ったままだ。 あの場の反応が正しかったのか延々と考えているのだろう。 考えている点では二人とも一緒だ、…