運転席に座る一騎と景色を交互に見る。
どうやら、隣にいる彼は同じ道を通っていることに気づいていないようだ。
本来、左折するべきところを右折したのが原因だろう。
大きな円を描くようにまた、戻って来てしまった。
エリスは状況を整理しながら、戻るルートなどを調べる。
端末を使わなくても、アンドロイド向けの交通情報共有網にアクセスすれば、主要な道路や抜け道などの道路状況がわかる。
必要な情報を入手するまで数秒もかからなかった。
再び、一騎の顔を見るとさすがに気づいたのか、周囲の景色や標識を見ている。
そして、エリスの視線に気づいて、
「道、迷っているよな」
問いながら速度を落とし、路肩に寄せる。
「そうだ」
彼は車を止めると、地図を開いて、
「何処にいるかわかるか?」
エリスは迷わず現在位置を指さして、
「この道を誤って右折したのが原因だ」
「ううむ」
「急ぐ理由は無い。だから、指摘しなかった」
彼女の言葉に一騎は一瞬、考えてから、
「ま、そうだ」
と頷いて、
「この道を左折するんだな?」
「そうだ」
「わかった」
走り出してしばらくしてから、
「……面白かったか?」
と彼はエリスに問うた。
エリスは何処か満足した表情で、
「興味深かった」