苛立ちに似た感覚を覚えながらケイは突撃してくる黒の機竜に連射撃を行う。
全武装で射撃しているのにも関わらず、攻撃は一つも当たっていない。
大して機体の性能は生かせない癖に英雄面して、友軍がついてきて当然という態度が気に入らない。
あの赤の機兵のパイロットならわかってくれそうだったのにあの機竜――ブラック・アウト――にべったりだ。
何より腹立たしいのは早く終わりにして出かけたいというのに落ちないことだろう。
こちらが撤収すれば済むことだがそれは兄に「不自然だからやめた方が良い」と止められている。
今は敵を落とすことに集中しよう。
溜まったストレスは甘えることで解消すれば良いのだから。
黒の機竜に向かう弾幕がさらに濃くなった。
田辺がリヴァイアサンの姿を観察できたのはほんの一瞬だけだった。
大きさに圧倒されると言った感慨を覚える暇もなく、今までに経験が無いほど密度の高い攻撃を受けたからだ。
先まであった対空砲に加えて近距離用対空機銃、短距離の高機動ミサイルも撃ってきた。
対空砲と機銃はともかく、ミサイルがしつこい。
打ち落としても次が放たれ、かわしても振り切れない。
弾幕の嵐に飛び込んでからミサイルアラートとAMSの温度上昇アラートが消えない。
シールドジェネレータは流線型の機体の中央の外周部に4カ所ある。
ブラック・アウトは体勢を立て直すため、左旋回してリヴァイアサンから距離をとる。
大きくバンクして再び、リヴァイアサンに機首を向ける。
狙うのはリヴァイアサン右側面にあるシールドジェネレータだ。