wired raven

文字通りの日記。主に思ったことやガジェットについて

混戦(6)

エクスカリバー1、後ろだ。何やってやがる!!』
エクスカリバー2が叫ぶ。
エクスカリバー1の後ろについているのはMD-35の改良型だ。
追尾性能の高いミサイルとシールドを貫通するエーテル凝縮弾を搭載している化け物。
『そのまま、直進だ。あたるなよ』
『了解』
真上から斬りこんでくるのは赤の機兵だ。
真紅の槍を構えた突撃。
エクスカリバー1の追撃に集中していたMD-35をエクスカリバー2の槍が貫通する。
それでも飛行を続けるMD-35の上に立つと、屈みこんで連続で拳を叩き込む。
MD-35の流麗な装甲がゆがみ、ひしゃげ、剥がれる。
内部構造に胸部搭載の機銃を浴びせると、MD-35を蹴飛ばして離脱。
バランスを失い落下しながらMD-35が爆発する。
『助かった。ありがとう』
『貸し1つにしておいてやろう』
『了解。必ず返す』
AMSの砲身の強制冷却が終わったのを田辺は確認する。
旧ブラック・アウトの方が機体に余裕があった。
感覚が追いついていないようだ。
『気に入らないなぁ』
見知らぬ声が通信に割り込んでくる。
エリスが通信元を特定、敵機竜群中央の大型機竜だ。
『そういう人をライバル扱いするんだ……』
『俺は人間様の得物を無人機でやろうってのが気にいらねぇな』
すぐさま、紅蓮が応じる。
『機体に振り回されるような人だよ?』
『機体に振り回される、だ? 自己紹介でもしてんのか?』
エクスカリバー2の通信に断続的なノイズ、おそらくは笑っているのだろう。
『悔しかったら単機で来いよ。お前の言う機体に振り回される野郎とやらはサシでやる度胸があったぜ』
『それも良いけどねー、今はそれはメインじゃないから残念でした♪ そーゆーのはまた今度ね〜☆』
脳天気な言葉にエクスカリバー2が叫ぶ。
『舐めるなーっ!!』
彼の叫びに応じるように機竜群がエクスカリバー2に向かってくる。
赤の機兵が背部の推進器を全開にして、機竜群に突貫開始。
黒の機竜がミサイルで援護しながら続く。
炎に似た軌跡を残してエクスカリバー2が機竜群に突貫する。
エクスカリバー1が多弾頭ミサイルを打ち込みながら続く。
彼らが通り抜けた分、機竜は減っていた。
が、その穴を埋めるように敵の機竜は増え、道を塞ぐ。
エクスカリバー1、キリがないな』
エクスカリバー2、競争でもするか』
『その話、乗った』
エクスカリバー2が両の手にエーテルで出来たブレードを握り、手当たり次第に機竜を叩き斬る。
機竜のシールドにはむらがあり、強度にばらつきがある。
ある機体は前と後ろの強度が高く、上下の強度が低い、などだ。
攻撃を受けたときに瞬時にその部分だけ強度を上げるタイプの場合、反対方向が脆くなったりもする。
彼らはそれをよく理解していた。
『やっぱり、こいつら硬いだけだな』
上機嫌にエクスカリバー2は言った。
ブラック・アウトの放ったミサイルが機体上部に命中し、敵の機竜が火に包まれる。
『間違いない。特性は変わってない』
シューティングゲームの敵か、こいつらはよ』
彼の台詞を知ってか知らずか、敵の機竜が機銃とミサイルを雨のようにエクスカリバー1と2に向けて撃ち込む。
360度から放たれる攻撃に対し、2機は同じ対応をとった。
エーテルバーストシステムを起動、それぞれの機体を中心に大規模な爆発が発生する。
その爆発は周囲の敵機竜とそれらの放ったミサイル、機銃弾を飲み込み蒸発させた。