wired raven : Automatic Wing

文字通りの日記。主に思ったことやガジェットについて

混戦(9)

スグリは各ギルドの魔術師を召集し、大規模攻撃魔術の準備を進めていた。
使用する魔術は空間をえぐり取る魔術だ。
有効半径がkm単位の為、地上絵のごとく魔法陣が描かれている。
その魔法陣の模様にそってエーテルを散布する機械と魔術師がある。
魔法陣のほぼ中央にスグリはいた。
ある程度の規模の魔術になると魔術の威力を強化するエンハンサー、エーテルの制御量を増やすアンプリファイアと呼ばれる魔術師の協力が必要になる。
今、行おうとしている規模の魔術だと、それらが部隊単位で必要だった。
準備は着々と進んでいた。
スグリが指示を出そうとしたところで、オープン回線での通信が飛び込んできた。
『今からボスバトルするよ〜、デスペナ覚悟の自信家とか募集中だからね〜☆』
スグリは次の言葉を待つ。
『ブラック・アウトが先に落ちるか、このリヴァイアサンが先に落ちるか……勝負はそれだけだよ? 精々全力を尽くしてね♪』
大ボスとも言える機体は敵の機竜群中央にいるようだ。
彼女がデータを調べる前に敵から知りたい情報が来た。
第1世代の拠点防衛用の大型機竜だ。
移動速度は低いが戦闘機竜を上回る分厚い装甲と、圧倒的な火力が特徴だが、さらに火力が増していた。
機竜5機をシールドごと貫通するだろう。
「これはさすがに寝返るヒトたちもでるかしら?」
彼女の言葉を証明するように味方から通信が入る。
『機竜隊の一部が反乱を起こした!! 地上でも動きがあるぞ!』
了解、あなたも気をつけてね、と短く返すと指揮車に駆け込んで、
「解放回線で全体に伝えるわ。準備は良い?」
通信士は笑顔でいつでも、と答えた。
ざっと、見回した限りではここにいるのは味方のようだ。
「あなたについた方がこの戦いは楽しい。そう思うんですよ」
スグリの心を見透かしたように彼はそう言って、ヘッドセットを渡した。
「ありがとう」
ヘッドセットをつけると、指揮車中の視線が彼女に集中した。
だから、と言って彼女はどうもしなかった。
左手でヘッドホン部分を押さえながら、
「エンケの空隙のスグリより全軍へ。言うことはいつも通りよ、楽しみなさい。その為にどうすればいいのか、何をなすべきなのか考えて行動すること。以上」
正面の大型ディスプレイから幾つか味方の部隊の色が塗り変わる。
味方の緑から敵を示す赤へ。
混沌としてきたこの状況をスグリは楽しんでいた。
そうない状況なのだから楽しまなければ大損だろう、と。
「地上の護衛部隊に出番が来たと伝えて。私は準備を続けるわ」