wired raven

文字通りの日記。主に思ったことやガジェットについて

混戦(7)

オフィーリアとエプシロンの二人は地上の魔術師部隊の護衛にあたっていた。
彼らの頭上、はるか高い場所で敵と味方の機竜が戦っている。
時折、落下してくる機竜の残骸を銃撃や魔術で破壊するのが彼らの役割だった。
「あの声……」
無線から聞こえてきた敵の大ボスの声に聞き覚えがあった。
「ケイさん、ですね」
エプシロンの思考を補うようにオフィーリアが言った。
「まさか、とは思っていたけど」
「真上から残骸、来ます」
レーダーに映る機竜は非常に大きい。
銃撃でも魔術でも破壊はできないだろう。
エプシロン、防御魔術を展開。
半球のバリアが彼らを包み込む。
バリアから外れた場所に機竜が落下し、爆発、炎上する。
炎と破片をバリアが跳ね返す。
爆発が収まると、バリアを解除して、
「行って来るよ」
「あまり、待たせたら駄目ですよ」
「そうだね」
苦笑いをしながらエプシロンは駆けだす。
そして、歩兵用のボードを圧縮空間から呼び出し飛び乗る。
ボードがエーテルを浮力と推力に変換し、加速する。
青く長い髪が風に流れる。
彼を見送るオフィーリアに指定通信が来た。
『のこのこ前線に出張ってくると思ってたよ、むっつりさん!』
声と同時、機竜の残骸を突き破って何かが出てきた。
未だに熱を帯びた残骸の上に「立つ」熊のぬいぐるみ、ぶりきの兵隊、木製の人形。
残骸の上ではなく、ひっくり返したおもちゃ箱なら良かったかも知れない。
意思を持つように自ら動き出す光景は不気味だった。
ぶりきの兵隊がライフルを構える。
危険を感じてオフィーリアは塹壕に伏せる。
着弾音と土の飛び散る音、雨のように土の降り注ぐ音。
手前に落ちたようだが、威力は洒落にならなかった。
横に居る男がJesus!!などと叫んでいる。
武器を狙撃銃から短機関銃2丁に持ち替えてオフィーリアは応戦を開始する。
『すまない』
「聞こえてましたか?」
『無線の中継は君に任せたままだったからね』
エプシロンの声に溜息が混じった。
『後で注意しておくよ』
「あまり、厳しくしないであげてください。荒れたくなる時もありますから」
『りょーかい。それじゃ』
通信が終わる。
携帯無線の範囲からエプシロンが離脱する。
「D:6:Aにて正体不明の敵と交戦中、至急応援をください」
応援を要請しながらぶりきの兵隊の隊列に向かって連続発砲。
ぶりきが浅く凹み、兵隊が後ろに数mほど吹っ飛び乾いた音を立てる。
オブジェクト破壊メッセージは表示されない。
オフィーリアは構わず、射撃を続行する。
「応援が来るまで持ちこたえましょう」
彼女の言葉に周囲のキャラクターが頷き、攻撃を以て応える。