洗濯物を干し終えて、居間に戻るとテーブルの上の携帯電話のLEDが点滅していた。
同居している誰かが忘れ物でもしたのだろうか、とカシスは携帯電話を開いて内容を確認した。
差出人は別の棟に住んでいる友人の少女からだった。
風邪で寝込んでいるから今日は会えない、と言う内容だが彼女は部屋から出ると鍵をかけて駆け出した。
瞬子の部屋の前にたどり着くと、白の少女は走ったせいで乱れた服と呼吸を整えてから扉を開けた。
いつものように鍵はかかっていなかった。
「調子はどう?」
カシスはベッドで横になっている瞬子に尋ねた。
「さっき計ったら37度5分だった」
言い終えると瞬子は乾いた咳を数回ほどした。
白の少女は黒の少女に近づいて、その額にそっと触れた。
「熱は、高いわね」
「……手、冷たくて気持ちいい」
「氷枕、作りましょうか」
「もう少し、こうしていて欲しい」
そう言うと黒の少女は布団を引っ張って口元を隠した。
「では、少しだけよ」
「……いじわる」
「ふふ、知らなかった?」
「知ってた」
「それだけ元気があればすぐに治るわ」
白の少女は黒の少女を優しく撫でながら、
「何か食べる?」
「今はあまり、食べる気がしないの」
「そう。でも、水分は摂った方が良いと思うわ」
黒の少女は目を閉じて、
「うん……」
弱々しくうなずいた。
「今日はゆっくり休みなさい。家事は私がやるから」
「……ありがとう」
「何か飲み物を買ってくるわ。他に食べたいものはある?」
「特には無い、かな」
「わかったわ。それじゃ、すぐに戻ってくるから」
白の少女の言葉に黒の少女はうなずきで返すと、静かに眠り始めた。
しばらく、白の少女は黒の少女を眺めて、
「――」
額にそっと、口づけをしてから部屋を出て行った。
メモ
- 簡単にまとめると、瞬子が風邪をひいたので、カシスが駆けつけるというお話し。
- 瞬子は身体が弱いのでちょっとしたことで重病になりそう、とカシスは心配しているようで。
- 瞬子はマスターシェル、カシスはAlternativeシェルを想定して書いてみた。
- 額へのキスは友情を示すものだと聞いたけど、わかりにくい。