wired raven

文字通りの日記。主に思ったことやガジェットについて

少年もしくは少女と、少し歳の離れた親戚のお兄さんが喋ってる話(恋愛要素なし)

お題箱から

少年もしくは少女と、少し歳の離れた親戚のお兄さんが喋ってる話(恋愛要素なし)

「やぁ、大きくなったね」 「そうかなぁ」 そういいながら少年は自分の頭のほうに目をよせる。 「昔、会ったときはこんなに小さかったじゃないか」 と右手の親指と人差し指で大きさを表してやると、 「そうやってからかう。同性でもセクハラは成立するんだよ、知ってた?」 「うわ、手厳しい」 「小遣い稼ぎに訴えられたくなかったら、オレンジジュースをおごるんだな」 「ま、おごってやるから入れ」 「おじゃましまーす」 重そうな鞄を玄関マットの上にどさっとおろして、靴を脱いだ。 勢いよく脱ぎ捨てると見せかけて、きれいにそろえなおす。 「兄さん、一人暮らしなんでしょ」 「場所に余裕があるから、泊めてやろうって話になったんじゃないか」 冷蔵庫からオレンジジュースを取り出して、氷を入れたグラスに注ぐ。 オレンジジュース好きだとよく覚えていたものだ、とおれは感心した。 「いやー、片付いてるなって」 「ああ、お前さんは部屋が汚いからな。片づける癖をつけないと、後が大変だぞ」 「あとっていつさ」 「5年ぐらい先だな」 グラスを前におくと、いただきます、と小さな声でいって一気の飲み干した。 「外、そんなに暑かったのか?」 「電車に乗ったら、買う暇ぜんぜんなくて、喉乾いたんだよ」 「おうおう、先が思いやられる」 「でも、いいんだ。無事についたし」 初の一人旅だそうだから、無事に我が家にたどり着いただけ上出来だ。 念のため、連絡先も教えておいたが、到着予定時刻の連絡だけだった。 アドバイスを求められるものだと思っていたから、それが以外であり、少し寂しい。 昔はいろいろと頼られたのにここ数年で心身ともに成長した、というわけだ。 「何、考えてたの?」 「おれもお前ぐらいの時があったんだなって」 「絶対違うこと考えてた。子供っぽいとか考えてただろ」 「数個しか年が離れてないんだぞ。さすがにそこまでは」 「ほらー、そこまでっていったあ」 そういって彼は空になったガラスを突き出す。 はいはい、と返事をしながらおれはグラスにオレンジジュースを注いだ。