機竜間で交わされる高速の会話がディスプレイに文字のログとして流れていく。
人間の田辺にそのログを読むことは難しいが、丁寧にエリスは必要な部分をピックアップして、音声で説明した。
相手の機竜もアンドロイドが機竜をやっているという。
第二次サウスフォレスト会戦で、自分の機竜を潰したので2代目、と言うことらしい。
この機竜を潰した際に竜騎士と騒動があり、今は距離を取っていると言う話だった。
『田辺、何か案はあるか?』
「この場合は向こうを待つしか無いだろ」
シートに背中を預けながら田辺はいった。
すぐに相手の機竜から、今度は音声で返信が来る。
『それでは納得できないのだ。私が』
「お前は一週間の猶予を与えたんだろう? なら、その一週間は待つべきだ。下手にお前から連絡を取ったら、猶予の意味が無くなる」
『……私は彼女を傷つけたことを悔やんでいるようだ』
急に声が沈んだ調子になる。
きっと、細かな神経をしているのだろう。
「後で謝れば良いだろう。関係を見直す良い薬になる」
『しかし……』
『激しい口論は互いの考えを見直す機会だ。有効に活用すべきだ』
『……共通の見解のようだが、あなたたちにも同様の経験があるのか?』
予想外の問いに田辺とエリスの目がリアルで合う。
すぐに二人は頷いて、同時に返答した。
『当然だ』
「経験があるから言えるんだ」
『経験則か。心強いな』
「皮肉か?」
苦笑いしながら田辺。
『下手なロジックよりは信用できる。二人に相談出来て良かった』
『参考になったのなら幸いだ』
「エリスに台詞を取られたな……グッドラック」
『まるで戦場に赴くような台詞だ』
『戦場に違いはない。グッドラック』
無線に相手の軽い笑いが入った。