基地壊滅の報せはすぐにミサイル基地の司令室にまで届いた。
「ツイスト基地が奇襲を受けた。FAEの直撃で地上施設は完全に破壊された」
「敵は単機だ。渓谷を抜けて、超低空で攻撃をしてきたらしい」
「こちらの意図に気づいているようだな」
「防空隊を緊急発進させろ。ミサイルの発射準備完了まで持ちこたえさせるんだ」
『データバンクと照合。敵機竜はMD-32』
MD-22よりも小型で軽量機体でエーテル型推進器も改良されている。
格闘戦ではMD-22を圧倒するスペックを持つ。
こちらが撃ってくるよりも先に敵が対空ミサイル10発を発射。
「正面から撃ち落とす」
迷わず田辺は宣言、機体の各部に設けられたアンチミサイルレーザーがアクティブになる。
『敵ミサイル迎撃は私が行う』
「了解」
ブラック・アウトの挙動にあわせて、敵の機竜が四方に散開する。
軌跡が花のように開いた。
正面から敵ミサイル群に向けて、ミサイル迎撃用のレーザーを照射。
レーザーに焼かれてミサイルが爆散していく。
エリス、機体の前方にシールドを展開し、破片を弾く。
ブラック・アウトがミサイルを撃ち落とす間に敵は弧を描いて、ブラック・アウトの後ろに食いついてきた。
『被ロックオン。ミサイル警告』
田辺、機首を上に向けて急減速を開始。
エリスが田辺の意図を読んで、ノズルと翼面を制御。
ブラック・アウト、機体の底面が空を向く背面飛行状態で敵の機竜と向き合う。
田辺、敵のミサイルに向けて、短距離ミサイル発射。
さらに敵機竜をアンチミサイルレーザーでロックオン、間髪入れずにトリガーを弾く。
レーザーは5機のMD-32を貫き、完全に破壊する。
先と逆に反転し、ミサイル基地に向かう。
動ける機竜は敵にもう無いらしく、基地は静かだった。
対空兵器も確認できない。
『サイロ確認』
HUDにサイロがマークされる。
半地下式のサイロだ。
「EBBセット」
前哨基地から贈られたエーテル・バースト爆弾。
『完了』
サイロを捉えると同時にEBBをリリース。
ブラック・アウトは戦闘上昇し、安全圏まで待避。
EBB炸裂、白い光が基地とサイロを飲み込む。
半球状に光は広がり、基地を包み破壊する。
『敵、弾道ミサイルを発射』
HUDに流れた文字通り、白い光を突き破って敵の弾道弾が現れた。
『ブラック・アウト、聞こえるか?』
「聞こえる。弾道ミサイルが発射された」
『こちらでも確認した。だが、それは我々が片付ける』
「間に合ったのか」
『さすがに全部、任せるわけにいかない』
上を見れば前哨基地の機竜隊がいる。
「了解。帰投する」