横で眠っている田辺を見ながら、エリスは先までのやり取りを再生し、解析する。
最初はエリスを咎めるような、励ますような話で、途中から自分のやってきたことすべてを悔やむことを打ち明けて、話を終えた。
話に一貫性があるとするなら、言いたいことを言ったことだろう。
話を終えた後、田辺は糸が切れたように倒れた。
すぐにエリスは脈や息を調べたが、先より穏やかなぐらいで問題は無かった。
記憶を再生すればするほど、解析不能になっていく。
この解析不能の要素が人間を人間にしているものなのだろう。
「・・・・・・あ」
「起きたか」
「・・・・・・あれ?」
完全に目が覚めているわけではないようだ。
「話を終えた直後に倒れた。だが、異常は見られなかった」
「そうじゃなくて、どうして、お前が俺を抱いて……寝ているんだよ」
途中から田辺の声が小さくなった。
「私の生体センサーが接触測定型だからだ。異常が発生した場合に備えた結果だ」
エリスの言葉に頭痛を覚える田辺。
「ああ、そうか。もう大丈夫だ。ありがとう」
その言葉にエリスは腕をほどいた。
田辺は起き上がると軽く伸びをする。
床で寝ていたら、身体の節々が軋んでいただろう。
寝ていたのはいつもの万年床、エリスが運んでくれたらしい。
後ろでエリスは静かに立ち上がると、
「精神的疲労が蓄積していたようだ。回復はしなくて良いのか?」
背中から聞こえる問いに田辺は少し考えてから答えた。
「それはさっき片付いた。お前のお陰だよ。エリス」
「そういうものなのか」
「そういうことなんだよ」