wired raven

文字通りの日記。主に思ったことやガジェットについて

アドストラトスフィア(9)

9. 48時間前 イルミネア大陸上空
大陸の至る所で戦いが始まっていた。
夜の空からは戦いの光がちらちらと揺らめいているのがよく見えた。
「何機上がれた?」
第500飛行隊1番機「ブラック・レインボー」のレイルは振り返りながら叫んだ。
振り返れば5機の機影が見える。
3番機のブラック・アイズのステインが叫んだ。
「ブラック・アウト以外はここにいます!」
「あいつら、いったい何を」
「基地との通信は回復していない。おそらく、通信施設をやられたのだろう」
ブラック・レインの時雨が呟いた。
「レーダーは敵のジャミングを受けて役にたたない」
時雨の機体には強力なレーダーが装備されていたが、敵のジャミング能力が優っている。
レーダーは真っ白のままで何も見えなかった。
ブラック・アウトは機体にブースターと武装を取り付けている最中だった。
まもなく終了というタイミングで敵歩兵部隊の襲撃を受けた。
ギルドマスターの山辺の判断で飛行可能な機竜は緊急発進、上空に退避できたがブラック・アウトはまだ基地の中だ。
地上要員もまだ基地の中だろう。
しかし、機竜の装備では地上要員の救出は不可能だ。
敵も味方も構わず殺してしまうに違いない。
近隣のギルドに応援要請を出したがジャミングの影響で届いていないだろう。
基地の滑走路を見れば敵の歩兵がロケットランチャーで地上施設を攻撃しているのが見えた。
バックファイアで人の形が浮かび上がるのだ。
狙っているのはブラック・アウトがいる格納庫だが、エーテル・リアクターの暴走に備えて作られた強固な構造体はそう簡単に壊せないようだ。
格納庫の上、光が点滅している様子が見えた。
「格納庫の上を見ろ、何か、点滅してるぞ」
レイルの言葉に時雨はキャノピーからそれを見た。
「モールス信号だ。……援護してくれ。これから地上要員を連れて脱出する。」
「地上の敵歩兵部隊を蹴散らすぞ」
「待て、レイル。7時方向から敵と思われる機竜10機が接近中だ」
ムトーが叫ぶ。
「俺と日下部と海老名で敵機竜隊を迎撃する。海老名は撹乱を頼む。時雨はジャミングを破る手段を探してくれ。残りで援護だ」
全員が了解と返すとレイルは叫んだ。
「行くぞ」
Vの字編隊が崩れる。
推進器の光が流れ星のように夜の空に軌跡を描いて散っていく。