SS
1 機体から離れるように歩いて、振り返る。 見た目はこの空軍の標準的なものだ。 性能も標準的でユニットの交換で幅広い任務に対応できるという。 運動性能も高く、ミサイルを打ち尽くしたあとの空中戦でも優位になれる、とも。 しかし、搭載している火器も…
今年も誕生日がきた。いくつになったのか、と聞かれるとたいてい、はぐらかすことにしている。 正直に答えても信じてもらえないから。 私が生まれたのはAD2047年7月14日。 今年がAD2117年。 単純に数えて70になる。 ヒトで言うならお婆さんだけど、FSは違う…
カーペットの上には寝転んでいる人物が一人。 気持ちよさそうに静かに寝息を立てている。 「いい加減、起きてほしいのだけど」 と言ってみるが起きない。 しばらくは部屋の隅を掃除しているが、やはり目覚める気配はない。 「起きないと掃除するわよ」 近づ…
「いくら雨宿りだっておれはこんな古びた館は嫌だぞ。いったい、いつの時代に誰が作ったかわからないのに」 「数十年は昔だろうな」 俺の言葉にレイフが眉をひそめる。 埃で調度品から床まで白くくすんでいる。 「ジャック、もう少しましなところで休もうぜ…
「さみぃ……っ」 暖房のきいた店内に入ると外の寒さが際立つ。 カウンター席がふさがっているのを見てからテーブル席に腰を下ろした。 寒いからざるそばはないな、と彼はコートを脱ぎながらメニューを覗いていると、 「すみません、相席でもよろしいでしょう…
謎の生物 「見てください。こいつはxxxxの幼体です。見てくれは可愛いですが……おっと、今、噛み付こうとしました。この口を見てください。小さな牙が沢山あります。見た目が可愛くても触らないようにしてください。……ああ、正面から酸をかけられました。この…
「あいつらが攻めてきた時、全員がもうおしまいだと思ってたんじゃないか? なんて言うんだっけ、あいつらが使ってる戦闘機……まぁ、名前はいいか。あいつら、ビルで自爆事故してな。で、外に放り出された奴をボコって、試しに誰かが食ったんだよ。うまくって…
fitGearは眼鏡型のデバイスだ。 一昔前に大流行したスマートフォンを眼鏡にかけられるようにしたものだ。 視界に重ねて、情報を表示できるようになったので、ナビや飲食店などの検索に威力を発揮した。 発売当初は色物扱いされたが、自由度の高さが評価され…
この部屋は何度入っても慣れないな、とハルは石造りの部屋を見回す。 音がもれないように石の壁は分厚く、間には枯れ草などが敷き詰められているという。 この中で剣を交えても誰も気がつかない、と市長のアーサラが真顔で言ったこともある。 それが市長の執…
"彼にとってハル・ノイマンは低脅威の存在でしかなかった。 声をかけられた時から決闘場で対峙するまでそうであった。 評価が変わったのは決闘が始まってから数秒後。 ハルの一撃で彼が10mほど後退したからだ。 彼には人間の訓練の相手を務めた経験があった…
「これは決闘だからな、殺し合いじゃないからな!」 トーマスは物言わぬ異国の騎士に決闘のルールを説明していた。 説明すれば首を縦や横に振っているのである程度は会話は成立しているはずだ。 だが、どれぐらい正確に理解しているかはわからず、トーマスは…
腕組みをしながらトーマス少年は唸っていた。 目の前には自分の倍近い身長の鎧がある。 一週間ほど前に現れた異国から来た騎士だ。 正確には異国から来たらしい騎士だ。 彼の家は代々から騎士向けの鎧を作っている。 父が鎧を作っている様子を見て育ってきた…
「市長」 「ああ、ハルか。待っていたよ」 書類から目を離さずに小柄な少女が応じた。 「待っていた、というのなら、視線をこちらに向けてくれるとありがたいのですが」 「私は忙しい。手短に済まそう」 「あまり、手荒に扱うと拗ねますよ」 言葉は厳しいが…
「ねえねえ、どこから来たの?」 「その鎧は何でできてるの?」 「お腹すいた? 何か食べる?」 と子供が矢継早に話しかけているが、銀色の騎士は声を発するどころか身動き一つしなかった。 「うーん」 「言葉がわからないのかなぁ」 などと子供たちはそれぞれに…