wired raven

文字通りの日記。主に思ったことやガジェットについて

異世界に飛ばされたロボットの話(7)

この部屋は何度入っても慣れないな、とハルは石造りの部屋を見回す。 音がもれないように石の壁は分厚く、間には枯れ草などが敷き詰められているという。 この中で剣を交えても誰も気がつかない、と市長のアーサラが真顔で言ったこともある。 それが市長の執務室の隣にある会談用の部屋だった。 ハルから異国の騎士が敵ではないこと、今知られているどこの国の騎士でもなさそうだと聞いたアーサラは、 「敵ではないのはわかったが、報酬の問題は残ったままか」 アーサラは椅子の背もたれに体を預け天井を仰いだ。 「私も他の騎士に聞いてみたが口を揃えて知らないと言っていた」 「直接、聞いてみるのはいかがでしょうか」 「あの少年に頼めばそれもできるか」 アーサラはゆっくりと体を起こし、 「もっと、はやく知っていれば決闘をしなくても良かったのだがな」 「はは、違いないです」 「そうすれば報酬も削れる」 「その発言は騎士との信頼関係を傷つけますよ」 とハルは苦笑いしながら言った。 「すまない。君相手だとつい、な」 「信頼されていると解釈しておきます」 ハルは笑顔のままだがアーサラは姿勢を正した。 アーサラが背筋を伸ばして座ると小柄な体格なせいか、椅子にちょこんと座っている形になってしまう。 たいていの者は見ても顔に出さないようにしているが彼は違った。 吹き出す彼を見てアーサラは、 「それが市長に対する態度か」 「いや、すみません。どうも市長相手だと」 「聞かなかったことにしよう」 「付き合いが長いのも考えものですね」 「同感だ」 そこで二人揃って姿勢を正して、 「あの少年には私の方から連絡する。何かあったらすぐに知らせる」 「わかりました。僕も何かわかり次第、連絡します」