wired raven

文字通りの日記。主に思ったことやガジェットについて

アドストラトスフィア(2)

2. 2ヶ月前 現実世界 田辺宅
「状況は芳しくないな」
一騎は空中投影ディスプレイ内のレポートを見て言ったのだった。
宇宙空間航行可能な機竜を所有するギルドおよびギルド同盟はファルクラムの迎撃の準備をしていた。
機竜を所有しない、もしくはできないギルドが不穏な動きを見せているとそのレポートにはあった。
「これはラースタチュカ事件と同じかそれ以上の戦闘が予想される」
とエリス。
「防衛は複数のギルドに依頼している。彼らが守っている間にエーテルリアクター使用可能高度まで上昇しなければならん」
一騎はそう言って空中投影型ディスプレイに防衛に参加するギルドの一覧を表示した。
リストには基地周辺を護衛する歩兵のギルドから飛行中の彼らを護衛するギルドが列挙されていた。
当日の護衛には第500飛行隊のブラック・アウトを除く全機もあたる。
「まさに総力戦だ」
「消耗すれば今後に障害が出ると推測する」
「まさに生存競争だ」
とそこで彼は区切ってソファに体を預ける。
柔らかい背もたれが一騎の体を支える。
横に座っていたエリスも同じように体を預けた。
「しかし、防衛する側はどうやって迎撃するつもりなのだろうな」
彼は腕を組んで考える。
機体を強奪し、迎撃する。
後に技術を無条件で解放するか機体から技術文書まで破壊するか。
どちらにしても無理があるように思える。
「巨大なレールガンで迎撃するつもりか?」
「迎撃可能なレールガンは確認されていないが、秘密裏に建設が進んでいる可能性は高い」
「もし、あれば、俺たちごと仕留められるだろう。ただの杞憂であることを願うよ」
そう言って彼は立ち上がって、
「休憩だ。コーヒーを飲もう。ミルクと砂糖はいるか?」
「ブラックだ」
「大人の味だな」
と彼は笑って台所に向かった。