wired raven

文字通りの日記。主に思ったことやガジェットについて

帰り道

  • worksに数えるかはひとまず見送り。

すっかり、軽くなったクーラーボックスを担ぎ直して一騎はエリスに尋ねた。
「了解した、で終わりにして良かったのか?」
迷うことなくエリスは答える。
「良かったのだ」
「ふぅむ」
一騎は何か言いたかったが唸るだけしかできなかった。
「私はフユに人間全体のルールや個体差を理解するよう求めた」
「理解されたかはわからないがな」
「それはお互い様だと判断する」
「俺がフユを理解していないと言うことか」
俺たちだ、とエリスは主語を訂正してから、一騎の言葉を肯定した。
「ふむ。俺たちが理解していない、か」
「時間をかけて理解すれば良いのだ」
暫くしてからエリスは、
「秋人に悪いことを言った」
エリスの言葉に一騎は驚き、エリスの顔を見て問うた。
「悪いこと?」
「彼の立場を理解せずに間違った案を提示してしまった」
「あの書き換えの件か」
「そうだ」
「それは直接、彼に謝るしかないだろう」
「理解している」
「エリス、的外れな意見かも知れないが――」
一騎は言うべきかしばらく悩んだが続けることにした。
「フユと自分が近似だと思っていないか?」
「共通項は多いと判断する」
「つまりは肯定するわけだ」
「そうだ」
「だが、彼女はお前ではない。逆もそうだ」
「理解している。だから、誤った対応をした。まずは私たちが彼らを良く理解する必要があると判断する」
エリスの言葉に重々しく同意した。