『敵、機兵の降下確認』
『味方の撤収完了』
『ビッグ・アップルのタイマー設定完了、240秒後に起爆します』
『敵の機兵が移動を開始』
『予想通り、解除に向かっているか』
『やはり、旧プロトコルは完全に解読されているようですね』
『ったく、仕事増やすなよなぁ』
『こっちとしてはやりがいがあって良いよ』
『撤収の時間は何とか稼げそうだ』
『ビッグ・アップルのタイマーが解除されました』
『思ったよりも早いな』
『前方に強力なエーテル変動を検出、テレポートです!』
ロケットブースターの加速に身体が押しつぶされそうになる。
それでも操縦桿はしっかりと握り、目は正面を捕らえる。
眼前に広がるのは宇宙の黒と星の青だ。
『ブースター切り離し』
同時にブースターが切り離され、その様子が後部カメラが映す。
ブースターの他に10機の機竜の姿もあった。
「俺たちが間に合うか怪しいところだ」
「間に合わせるのだ」
「そうだな。再突入コース変更だ。エーテルの大量消費になるがやってみる価値はある」
「再突入コースを再計算。割り出し完了、HUDに表示」
「友軍にデータ転送を頼む」
「了解。……転送完了」
通信機から無数の声。
「ノリが良い連中だ」
「再突入まで残り120秒」
「了解」
指揮車の前に現れたのは敵の機兵だ。
車両の装甲は分厚く、大体の攻撃は通さない。
が、それは対歩兵の話であり、対機竜・機兵戦では通用しない。
特に機兵に対する防御はこの大陸では軽視されていた。
理由は機兵が存在しないと単純だ。
そういう"文化圏"に機兵を主流とする文化圏の人間が来た、それだけのことだ。
「敵にロックオンされました……」
「アブソーバは全開にしておけ。ギリギリまで粘れ」
「後続の敵機兵に追いつかれました」
「囲まれた、か」
敵の機兵はそれぞれの武器を構えているが撃ってくる様子は無い。
「人質か、それとも情報が欲しいのか。判断に困る連中だ」
突然、指揮車の正面にいた機兵の胸部装甲が陥没した。
続いて爆発。
「上空より友軍機接近中です。機竜12」
「援軍か!?」
「散開しろ。応戦だ」
「大気圏外から出張かい」
「ギャラは上乗せの上乗せの上乗せだな」
「金は良いからどうに―」
通信機からノイズ、ディスプレイには2番機全損のメッセージ。
「対空ミサイルぐらい使わせろよ。ったく」
『警告: 前方から対空ミサイル接近』
一騎の目も接近するミサイルを捕らえていた。
すぐさま機首を上げて垂直上昇、ミサイルがブラック・アウトの後方に食いつく。
「良いミサイルだ」
そう言いながら、後部レーザーガンを速射、ミサイルが爆発し破片をまき散らす。
破片の一部がブラック・アウトのシールドに弾かれる。
「次はこちらの番だ」