ブースターの速度を殺さず、ブラック・アウトは直進を続ける。
『敵レーダー波感知』
ヘルメットを経由してエリスの声が聞こえる。
そして、放たれる敵ミサイル群。
文字通り無数のミサイルがこちらに向かって迫ってくるが、田辺は冷静に事実を捉えている自分に気づいた。
AMSは使わず、マニューバのみで回避することを選択。
エーテルの無駄遣いはできない。
こちらを飲み込もうとするミサイルの群れの間を縫うように突破する。
少しでも操作を誤まれば、ミサイル群が次々と爆発し、ブラック・アウトは蒸発してしまうだろう。
ミスは許されない。
当たり前だ。
ブラック・アウトは迷うことなく、最適な回避ルートを選びミサイル群を突破した。
ミサイル群を抜けてきた機竜を見て、フレア1はコックピットで叫んだ。
「なんであいつが生きてやがる!!」
『フレア1、わかるのか?』
「フレア3、あれはブラック・アウトだ。間違いない」
フレア1の言葉にフレア3は困った顔を浮かべて、
『それはお前が落としたはずだろう? それがなんで』
「あいつら、落とされたふりをしやがった。チート野郎めっ!!」
『とにかく落とさないとやばいぞ』
フレア2が赤の帯を残して、ブラック・アウトに向かう。
光学センサーが捉えたブラック・アウトは前よりもいくらか小さくなっていた。
機動性をずっと、あげている可能性がある。
前と同じ戦術は通用しない。
「面白い。また、落としてやる」
フレア1、最大加速でブラック・アウトの迎撃に向かう。