wired raven

文字通りの日記。主に思ったことやガジェットについて

シミュレータ

『シミュレータ、起動』
『エリア:市街戦:敵:大型ロボット』
……大型ロボット、という言葉に疑問が出てくるが、考える間もなくシミュレータが動き始める。
広がった視界に見えるのは黒い足の一部だ。
すぐさま、センサーを全開にして、敵を確認する。
全長500mと言う数字に一瞬、測定ミスを疑い、再度測定。
「今回はこれが敵ですか……というか、漫画ですか?」
相手が歩くだけで地面が揺れる。
「通常戦闘の訓練がしたかったのですが……」
最低限の力で最大限の結果を得たい、と思ってシミュレータを使っているのに、と心の中で愚痴る。
愚痴りながらも、素早く戦闘モードへ移行し、背中の両黒翼を展開する。
繰り出される右足を左に向かって跳躍。
「図体が大きければ、挙動は遅いはずです」
返す声が無いことに気づいて苦笑い。
今日は一人だった、と思い出していると、真上から小型のミサイルが雨のように降ってきた。
圧縮空間からフレアを射出、全速力で敵の側面に回り込んでいく。
さらにフレアに食いつかなかったミサイル群に呼び出した機銃を速射、迎撃。
視界一杯に見えるのは足であり、上を見れば腰部があり、胴部があり、胸部があり、頭部がある。
「やはり、図体が大きい分、挙動は遅いですね」
巨大な腕でこちらを掴もうとするが、軽く身体をひねってかわす。
そのまま、背中に回り込んで、レールガンを構え直して射撃。
高速で撃ち出された弾は背中の装甲に命中、爆発が起こる。
さらに連続で5発撃ち込むが、巨大な身体が倒れる様子はない。
翼の色は黒から白に変わり、
「本気で行きます」
言葉と同時、敵の表面の装甲が音をたててゆがみはじめた。
ミサイルの雨も、撃ち込まれるビームもシールドに弾かれ、アルギズには届かない。
その様子を見て彼女は行けると確信、出力をあげて空間ごと敵をねじ切った。