白の少女は黒の少女のベッドに横たわりながら、黒の少女が液晶ディスプレイに向かっている姿を眺めていた。
今は波に乗っているらしく、両手の指を使って軽やかにキーを叩いている。
時折、変換で止まったり、エンターキーを叩いた後、少し考えるために止まったりもする。
こういう時は静かにしていたほうが良いだろう、と白の少女は持ってきた小説に視線を落とす。
物語はちょうど、街に広まっているウィルスの感染ルートを突き止めるところに差し掛かっていた。
「ねぇ」
作業の方は一段落ついたのだろうか。
黒の少女が話しかけてくる。
ページ番号を覚えてから白の少女は小説を閉じて、
「何?」
「どうして、人と一緒にいるの?」
「そう言えば、話してはいなかったわね」
「うん。種族や生い立ちは聞いたけど、人と一緒にいる理由は聞いてないの」
黒の少女の言葉に白の少女はそうね、と頷いてから身体を起こす。
「話を聞いた限りだと人に復讐してもおかしくないし……」
「そう?」
「だって、住処を追われて、半殺しにされてるのよ」
「理解できない?」
黒の少女はこくっと頷いた。
「私はこうやって生きている。それにあの星だって私がいただけで私有物ではないわ。それが復讐しない理由」
白の少女は一呼吸置いて、
「あの戦いはヒトか私のどちらかに理解があれば回避できたのよ」
「でも、もしもはないわ」
「その通りよ。だから、私はヒトを、ヒトと意思を通わせる方法を知りたいの」
「わたしといるのもその為?」
「それは、違うわ」
微笑んで、
「楽しいからよ」