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「これは決闘だからな、殺し合いじゃないからな!」 トーマスは物言わぬ異国の騎士に決闘のルールを説明していた。 説明すれば首を縦や横に振っているのである程度は会話は成立しているはずだ。 だが、どれぐらい正確に理解しているかはわからず、トーマスは…
腕組みをしながらトーマス少年は唸っていた。 目の前には自分の倍近い身長の鎧がある。 一週間ほど前に現れた異国から来た騎士だ。 正確には異国から来たらしい騎士だ。 彼の家は代々から騎士向けの鎧を作っている。 父が鎧を作っている様子を見て育ってきた…
「市長」 「ああ、ハルか。待っていたよ」 書類から目を離さずに小柄な少女が応じた。 「待っていた、というのなら、視線をこちらに向けてくれるとありがたいのですが」 「私は忙しい。手短に済まそう」 「あまり、手荒に扱うと拗ねますよ」 言葉は厳しいが…
「ねえねえ、どこから来たの?」 「その鎧は何でできてるの?」 「お腹すいた? 何か食べる?」 と子供が矢継早に話しかけているが、銀色の騎士は声を発するどころか身動き一つしなかった。 「うーん」 「言葉がわからないのかなぁ」 などと子供たちはそれぞれに…
元ネタ https://twitter.com/kyu190a/status/523008570804039680 関連 異世界無人戦闘メカ道中 - Togetterまとめ 連想して書いたもの 彼は突然の状況の変化に困惑していた。 仲間とのデータリンクは途切れ、飛ばしていたはずのドローンとのリンクも切れてし…
普通のアンドロイドは人間と全く同じ姿形をしているが、内部の構造は人間と異なっている。 人間の体は60兆の細胞、206個の骨から出来ている。 アンドロイドは表面に生体部品を使っているが、内部は金属や強化プラスチック、シリコンが大量に使われていて生体…
9. 48時間前 イルミネア大陸上空 大陸の至る所で戦いが始まっていた。 夜の空からは戦いの光がちらちらと揺らめいているのがよく見えた。 「何機上がれた?」 第500飛行隊1番機「ブラック・レインボー」のレイルは振り返りながら叫んだ。 振り返れば5機の機影…
8. 49時間前 EW内 ギルド「エンケの空隙」拠点 この古風な城の拠点には作戦指揮所と呼ばれる部屋がある。 石造りの城にはおおよそ似つかわしくない大型ディスプレイや通信機、高性能なコンピュータが所狭しと並んでいた。 基本的にはここから指揮を出すこと…
7. 2週間前 現実世界 田辺宅 居間の卓球ができそうなぐらい大きなテーブルいっぱいにロール紙状のディスプレイが広げられていた。 「持ってて良かった」 と楽しそうに言ったのはディスプレイの主の伊藤だ。 「皆で話すとなるとこういうのは必要だな」 「無駄…
派手に水しぶきをあげて白髪の青年が海に姿を消したのを見て、 「いつもどおりね」 とビーチパラソルの下で体を休めていた白の少女は呟いた。 「助けにいかないの?」 と横で寝転がっていた黒の少女が続ける。 「体が冷えているから難しいわ」 体が冷えると…
6. ニーレン外れ「キムラ研究所」 小天体が衝突するという事態はプレイヤーたちの視線を宇宙に向けた。 最大の変化は宇宙空間を満たしている亜エーテルを魔術などに使えるエーテルに変換するエーテル・リアクターの実用化と爆発的普及だ。 ギルド間の技術的…
「どう?」 プレーンテキストのSSを読み終えた白の少女をのぞき込むように黒の少女が問うた。 「面白いわね。心理描写が丁寧で良かったわ」 「ありがとう。悪いところは?」 「戦闘の描写が弱いかしら。それを補うだけ心理描写が強いからいいと思うわ」 黒の少…
「夢と現実を区別する手段はない」 とエリス。 「夢が覚めて現実に戻るという感覚はあるが、その現実が夢ではない保証はないしな」 と一騎。 「意識が途絶えているから記憶頼りだ。記憶の整合性から現実が続いていると感じるんだ」 そして、彼は複合商業施設…
5. 1週間前 EW内「不可知の森」 小高い丘からは不可知の森の全体がよく見える。 物騒な名前がついた森だがナビゲーションシステムが今ほど発達していなかった頃は、道に迷う者が後を絶たなかったという。 何処も似たような景色で迷いやすかったそうだ。 そん…
木製の桟橋の先、白の水着の少女が立っている。 長い金色の髪は潮風に靡き、空のように蒼い瞳が海をまっすぐ見ている。 手には一口だけ食べたと思われる棒アイスを握って。 その少女から15歩ほど後ろに離れた砂浜に白髪の青年が立っている。 彼は腕を組み、…
ロックオンと同時、彼女は2つのミサイルを発射した。 至近で放ったミサイルはターゲットの中心に吸い込まれるように命中、赤い花を咲かせた。 飛び散った弾頭が雨となって彼女の機体に降り注ぎ、機体を揺らす。 「ごめんね、最期まで迷惑かけちゃって」 そう…
3. 1ヶ月前 EW内放棄都市 アリウムは白い廃墟の街を探索していた。 この街はかつて交易でとても栄えたが大陸間の戦争により今の姿になった。 そんな話を聞いたっけ、とアリウムは回収クエストの対象であるビルの欠片を探す。 何でもとても高い建物でその欠片…
「敵襲!」 兵の一人が叫んだ。 直後、エイダの視界は黒く塗りつぶされた。 ぽつ、と何かが当たる。 何だろう、とエイダは思う。 ぽつ、と再び当たる。 えっと、とエイダは考えようとする。 ぽつ、とまた当たる。 冷たい、とエイダは感じる。 ぽつ。 雨かな、…
「人が人と会話するのはなぜだと思う?」と彼女は切り出した。 「話したいから、でいいんじゃないか」と僕。 「そう、話したいから」と返してきた。 「では、どうしてそう思うのか。そこを考えてみようか、だね」 と僕は彼女の話し方を真似て言った。 彼女は…
瞬子は久しぶりにメッセンジャークライアントを起動させた。 たまには使わないとメンバーに忘れ去られてしまう。 作業は区切りがいいところまで進んだので心置きなく会話に参加出来る。 小さな縦長のウィンドウにオンラインのメンバーが一覧で表示された。 …
2. 2ヶ月前 現実世界 田辺宅 「状況は芳しくないな」 一騎は空中投影ディスプレイ内のレポートを見て言ったのだった。 宇宙空間航行可能な機竜を所有するギルドおよびギルド同盟はファルクラムの迎撃の準備をしていた。 機竜を所有しない、もしくはできない…
1. 3ヶ月前 EW内大陸間非戦闘海域上 「時間ね」 スグリは甲板から船内に戻る。 エンジンの音も波の揺れもほとんどなく、金属のフレームのある丸い窓や白く塗られた金属製のタラップがなければ、陸にいると勘違いしそうだ。 狭い通路をつかつかと歩くスグリの…
エイダ・スノウは駅で人を待っていた。 人を待つのは嫌いではなかった。 約束の時間より少し早めについて、道行く人をただ眺めているのが好きだからだ。 時間が迫っているのか急ぐ人。 オフの時間なのかゆっくり歩いている人。 楽しそうに電話で話している人…
「アズ、上です」 「りょーかい」 アルギズの言葉に軽く返事をしながら、アズはスティックを下、丸ボタンを押して後ろに回避。 彼のキャラクターが敵モンスターのジャンプ攻撃を避ける。 着地硬直で動かなくなっているそのモンスターの顔面にキャラクターが…
早朝の境内には彼と彼女の二人しかいなかった。 「さすがに誰もいないね」 とガウンのジャケットを着た少年が少女にいった。 「狙い通りです」 黒の服の少女が微笑みながら返した。 どこへ行っても初詣には変わりはないから、と彼らは近所の小さな神社を選ん…
横を歩く白の少女の背はいつもの倍ぐらいあった。 いつもなら青年がしゃがみ込まないと目線の高さがあわないのだが、今日はほとんど気にしなくても良い。 「で、今日も姿をいじったわけですかよ」 と青年。 「ええ」 と素っ気なく少女は答える。 背が高くな…
映画のタイトルはFSと直球勝負だったが、肝心のFSが2部に入るまで出てこなかった。 1部は地下資源探査施設で人が消える事件で幕を開ける。 主人公は事件の現場に残っていた液体を分析し、それがかつてこの惑星にいたFSの体液と酷似していることを突き止める…
旅費を抑えるにはポイントがいくつかある。 交通費、宿泊費、食費の三点だ。 どれも削りすぎると痛い目を見る項目でバランスが難しかった。 移動には青春18切符を使って電車に乗り、宿泊費は二人で同じ部屋に泊まって浮かせることにした。 それは良いとして…
手に握っている小剣は先から出番がほとんど無い。 一度、距離をとったのがまずかったらしい。 相手は弾幕を展開し、こちらを近づかせないつもりのようだ。 少しでも疲れた様子を見せれば、ゆっくりとした足取りで近づいてくる。 それも剣と言うには巨大な凶…
「ま、マジぱねえっす!」 ヘゲルは軽いノリで相手の横薙ぎを後ろにステップして回避する。 防具の光学迷彩は効果がなく、着ているだけ邪魔になっていた。 子どもが布を被ってお化けの仮装をしたものと全く同じそれは、動けば空気を掴んで抵抗になる。 いっそ…