wired raven

文字通りの日記。主に思ったことやガジェットについて

映画のタイトルはFSと直球勝負だったが、肝心のFSが2部に入るまで出てこなかった。
1部は地下資源探査施設で人が消える事件で幕を開ける。
主人公は事件の現場に残っていた液体を分析し、それがかつてこの惑星にいたFSの体液と酷似していることを突き止める。
しかし、FSはすでに絶滅していると多くの人に認識されているがために主人公は孤立してしまう。
それでも主人公は自分の言葉を信じる仲間と一緒に証拠集めに奔走する。
仲間との協力もあって証拠が集まり、主人公が然るべき機関に連絡しようとしたところで、主人公が消えてしまう。
そこで1部は終わり、エンディングに入っていく。
2部はその事件から数ヶ月経った頃から始まる。
多くの人の記憶から事件の一連の記憶が消え始めていたが、再び、人が消える事件が起こる。
この時点で政府は主人公の友人から得た情報をもとにさらに調査を進め、FSの居場所を突き止めていた。
それは惑星そのものがFSだというとんでもない事実だった。
現在は休眠状態とも言える状態で、覚醒はしていない。
覚醒するまで時間は既に残りわずか。
極限の状態で惑星全域からの脱出が始まる。


大小様々な宇宙船群が巨大なリング状の施設に向かっている。
火事から逃れるために非常口に殺到する人のそれと同じだ。
その宇宙船群の後方、黒の機体が影のようなものと戦っていた。
あまりの速度にフレームから切れている。
一騎は一時停止をして敵の姿を確認しようとして、
「……」
止めた。
おそらく、形状はFSの近接格闘型に似たものだろう。
数mはある巨大なアメーバのような形をしている。
資料で読んだ形状を思い出しながら、さらにそれをアレンジしたものだろう、と彼はソファの背もたれに体を預ける。
真空中を高速で移動する敵に対し、黒の機体は翻弄されていた。
いや、ふりだ、と一騎は画面を見ながら思う。
弱いと見せかけて相手の気を引いて、船の脱出の時間を稼いでいるようだ。
しかし、それも長くは続かなかった。
敵は気がつくと、宇宙船群に向けて加速を開始する。
黒の機体群が小惑星をも蒸発させるレーザーで狙い打つ。
確実に敵の足は止まっているが、黒の機体群の数も減っていた。
だが、宇宙船群は確実にバイパスから地球に向けて脱出していた。
「ふぅむ」
そこで一騎は唸った。
UADSの戦い方が自己犠牲を前提にしている。
本物のUADSなら強力な火器をさらに投入するだろう。
それでは映画にならないとわかっているが、どうしてもそう考えてしまう。
機体のデザインも丸みが強くなり、より女性的な印象が強い。
本物も女性的な印象があるが、どこか威嚇的な印象もあったが、画面の中の機体には儚さを感じた。
映像がバイパスを正面から捕えたものに変わる。
リングの内側には波紋のように空間歪曲面が揺れている。
船が突入するたびに波立つ。
最後の船が突入すると波が止まった。
カメラは数秒の間、そのままだ。
どんな意味があるのか、と思っている一騎の視線の先でバイパスのリングが内側から膨れ上がる。
構造体が金属の悲鳴をあげ、崩れた。
花火のように砕けた構造体が画面の外側に向けて広がっていく。
人が消えた画面から女の声が聞こえる。
「これで加減しなくて済む」
小型の敵が一掃されて静まりかえった画面の中央に見慣れていた惑星が見える。
「おいで、相手をしてあげる。そして、終わらせるよ」
呼びかけられたFSが応じる。
惑星という殻を破るという形で。
地殻にひびが入り、めくれ上がる。
砕けた地殻は巨大な岩の塊となって真空中にまき散らされていく。
出てくるのは黒の塊だ。
表面は規則正しく波打ち、生命であることを主張している。
巨大な敵に対して、画面の中でUADSは一つの行動を起こした。
黒の機体は岩石に近づくと、それを食った。
機首部分に切れ目が入り、機首が四方向に花開き、岩石を捕まえるように。
FS側も一つの反応を見せた。
波打つ表面にいくつもの赤いレンズが作り出した。
球体に無数の目が生まれていく。
レーザーのレンズだ、と一騎は画面を見て思う。
その通りの現象が起こった。
画面を赤の線が無数に走り抜ける。
UADS機体群はそれらをシールドで防ぐ、もしくは回避運動で避ける。
回避運動をしながらUADSは一点に集まり、一つの形をつくり始めた。
集まった機体群は上下左右に伸びるがある程度まで広がると別の方向が別れた。
真上に1、左右に2、下方向は2。
「人、か」
呟く一騎の目の前で女性特有の曲線を持つ機械が生まれた。
FSはレーザーを打ち込むがUADSの巨人はシールドでそれを防いだ。
先の岩石捕食はエネルギーの補給だったのか。
降り注ぐレーザーの雨の中、巨大な少女が黒の塊に話しかける。
「わたしはね。あなたをもとにして作られたの」
この惑星に住む人間の多くは知っていることだ。
「だから、生まれた時から恨まれてもいた」
一部の人間はそうだろうな、と一騎は苦虫を噛み潰したような顔をして画面を見る。
「でもね、これで終わりにできるの」
少女がゆっくりと黒の球体に近づく。
球体はくるなといわんばかりにレーザーの雨を強くする。
だが、少女はゆっくりと迫る。
狂気じみていると一騎は思わず体を引いた。
それと同じことを黒の球体もやった。
少女の手が球体に届いた。
優しく表面をなぞりながら、さらに近づいて、球体を抱きしめる。
接触面からレーザーがこぼれるが少女は傷つきもしない。
全身で球体を抱きしめながら、眠るように少女は目を閉じて、
「おめでとう」
画面が真っ白な光に包まれた。
爆発音も何もない。
そのまま、白い背景の上に黒い文字が降ってきた。
スタッフロールだ。
リモコンの停止ボタンを押そうとすると後ろから降ってきた。
「まだ、続きがある」
振り向けばエリスが立っていた。
「わかった」
一騎はリモコンをおいて、画面のほうを向いた。
その彼の横にエリスは静かに腰を下ろして、同じように画面を見る。
白い背景が雲が晴れるように引いて地球が映った。
軌道上には宇宙船が見えるが様子がおかしい。
船のほかに残骸も見える。
「FSが混じっていたのか」
一般の船に偽装したFSもバイパスを抜けて地球圏に到達していた。
画面は様子を淡々と描きながらゆっくりと暗転。
静かに本編やドキュメントなどが選択できるメニュー画面に戻った。
「……皮肉、か」
「相互無理解がこの映画の根底にはあると推測する」
「主人公も証拠の形で突きつけようとしていたが、丁寧に話したことはなかったな」
「ほかにも相互無理解のシーンはある」
「UADSも人間に拒否されるのを受け入れていた。抵抗する様子はあまない。現状に酔いしれているように感じた」
一息おいて、
「さて、コーヒーでも淹れるか」
一騎が立ち上がるとエリスも一緒に立ち上がった。
二人はそろって台所に向かった。