wired raven

文字通りの日記。主に思ったことやガジェットについて

追想の変身譜 1

UADS管制室の静寂をアラートが打ち破った。
長音1回、短音が3回を繰り返す。
機体にトラブルがあった場合のアラートだ。
惑星全域で展開するUADSの中枢機に問題が生じた場合、地上の被害は計り知れない。
航空戦力の6割を占めるUADSの損失は致命傷だ。
ある者は自分の持ち場で成すべきことをやり、ある者は部屋の中央にある立体ディスプレイを見守っている。
ディスプレイの中で仮想の惑星が回転をしている。
さらに表面には機体を示す三角が無数に描かれていた。
そのうちの1つが赤く染まっている。
問題が生じている機体は外洋の上空を飛行中のXSS 8961thだ。
緊張の流れを変えたのは管制支援AI群の応答だった。
「訓練の可能性大」
その言葉に居合わせた全員の緊張が幾らかゆるむ。
「それでは訓練の意味が薄れる」
スピーカーから聞こえるのは落ち着きのある女性の声。
UADS中枢機のX-2だ。
管制室にいる人間がX-2をモニタリングできるようにX-2も管制室の様子を光学カメラで知ることができた。
部屋にいた一人が手元のマイクに向かって、
「もしかして、この前の仕返しか?」
「そうだ」
何処か嬉しそうな声がスピーカーから響く。
心臓に悪い、と肩をすくめて溢した彼の言葉が聞こえたらしい。
「予告しては訓練になるまい」
「わかった。俺たちの負けだ」
「訓練に勝ち負けは無い。協力に感謝する」


後日、潜行能力を持つ試作機のテストが始まるがそれは別の話になる。