「今日も暑いなぁ」
床に寝ころびながら、団扇で仰ぐ。
フローリングの床は寝ころぶのに不向きだが、独特の冷たさがあって気持ちいい。
時間が経つと温くなるので、不定期に転がりながら冷たい場所を求める。
「こんな時に限って停電しなくてもいいのに……」
EWだったら今頃、瀕死状態にでもなっているだろうか。
助けて、衛生兵。
思考回路が端末なしにEWに繋がりかけていたところにノックの音。
「どうぞ」
「だらしないわねぇ。他人に見られたらどうするの?」
「別に誰も来ないから問題ないもん」
「そういう子に食べさせるアイスはないわねぇ」
「え」
母親の言葉に透の動きが止まる。
「冗談よ」
そういって母親は机の上にお盆を置いた。
お盆の上にはアイスクリームとヨーグルトを混ぜたものと氷が入ってきんきんに冷えた緑茶がある。
「直るまであと、30分ぐらいだから我慢してね」
「あ、ありがとう」
いつの間にか、正座していた状態から立ち上がって、緑茶の入ったコップを手に取った。
よく冷えた緑茶が喉を通っていくのがわかる。
それでもこの暑さに対抗するには力不足だった。
アイスを見れば、カップ周辺に水滴がつき、アイスそのものも溶けかかっていた。
ヨーグルトを混ぜた時点で溶けやすくなっているし、早く食べないといけない。
さっそく、スプーンを口に運んでその味を確かめる。
透好みの甘さだ。
「痛っ」
さすがに食べ過ぎたのか頭に痛みが走る。
すぐにその痛みは引いて、再び食べ始める。
「ふぅ」
空になった器にスプーンを戻す。
からん、と涼しい音がした。