wired raven

文字通りの日記。主に思ったことやガジェットについて

昔話

アルファ星系第4惑星、恒星間移民計画の移民先として選定された惑星だった。
大気が地球とは異なる構成だったが、テラフォーミング可能と判断された。
環境自体に問題は無かったが、突如、一つの問題が浮上した。
第4惑星固有の生物であるFSの存在だった。
無人探査機で見落とされたそれは、恒星間移民船グングニル到着後の有人探査で敵対生物だと判明する。
グングニルの各代表は討議の結果、移民支援のアンドロイドを戦闘用に改造して対応することを決めた。


少女の足下をオレンジ色の液体が流れている。
敵の血だ。
色だけなら綺麗なものだが、臭いはきつく並大抵の人間ならばそれだけで滅入ってしまうだろう。
さらに周囲を見ると異様な光景が広がっていた。
人の形をした機械―アンドロイドだ。見かけは人間と変わらないのに破断面から金属のフレーム、銀色の人工筋肉が覗いていた。―の残骸とゼリーのような生物の残骸があちらこちらに転がっているのだ。
少女にも嗅覚と視覚はあったが気にするものではなかった。
酸素のない大気の下でヘルメット―バイザーにヒビが入っていた―を外して、敵がいないか確認する。
各種センサーに反応はない。
それでも愛用の狙撃銃を下げず、周囲の警戒をしながら会合地点に向かう。
敵の生物の残骸には寄らず、仲間だった残骸を盾にして。
砂を含んだざらついた風が少女の栗色の髪を揺らす。
ふいに藍色の瞳から液体がこぼれた。
少女には光学センサーの汚れを流す為の反応なのか、感情から来るものなのかわからなかった。