wired raven

文字通りの日記。主に思ったことやガジェットについて

堕天の果て

二人を久しぶりに見えた月が照らしている。
彼女の腕の中、少女は穏やかな寝息を立てている。
その頭をそっと、撫でながら彼女は穏やかな時間を楽しんでいた。
この穏やかで幸せな時間のためにあらゆるものを捨ててきた。
人によっては何て無駄な事をしたのだろう、と嗤うかもしれない。
だが、彼女にとっては、天から堕ちることと引き換えにしても良いものだった。
現に少女の頭を撫でる彼女の表情はとても満足そうだった。
「るぴなすぅ……」
少女が不意に彼女の名を呼ぶ。
夢の中でも彼女と一緒にいるのだろうか。
名を呼ばれたら名で呼び返すのが二人の決まりごとだ。
だが、呼べば少女を起こしてしまうかもしれない。
ならば、
「―――」
よほど耳を澄ませなければ聞こえない小さな声で少女の名を呼ぶ。
腕の中で少女は嬉しそうな笑みを浮かべた。
夢の中でも彼女は少女の名を呼んだのだろうか。
どちらにしても呼んだ事に違いは無いだろう。
そして、彼女の眠りについた。
夢でも少女と共にいられるように。