wired raven

文字通りの日記。主に思ったことやガジェットについて

単機

「敵の能力に敬意を表したい」
コックピットのシートに身体を預けながら田辺は言った。
『勲章物だと判断する』
と声だけでエリスが応じる。
竜の討伐というクエストを終えて、補給に同盟関係にあるギルドの基地に寄った。
その基地に向かう途中で、基地が敵の爆撃を受け、援護にまわった形だ。
敵の爆撃機をかろうじて退けたが、その基地に所属する機竜の全滅、滑走路の多くが使用不能になってしまった。
今、彼らは単機で敵の基地に乗り込むべく、補給と整備を受けている。
どうも、相手は小型の核弾頭まで用意しているらしく、この基地を完膚無きにまで吹き飛ばすつもりらしい。
できるものなら味方の応援が欲しいところだが、現実の時間を考えると難しかった。
整備員が整備完了の合図を送ってきた。
「全系統チェック」
『全系統異常なし』
「準備は、できたか」
『心の準備はできたか』
「当たり前だ。離陸許可がでた。行くぞ」
武装のブラック・アウトが唯一、無事な滑走路に向けて動き出す。
滑走路に到達と同時、最大出力でブラック・アウトは飛行を開始。
白の軌跡を残して空へ飛んでいく。
軌跡を地上に居た整備員や竜騎士たちが見上げている。
「息のあった連中だな」
「無駄口叩く暇があったら、修理を手伝えよ。援護しないと罰があたる」
「んだな」
整備員は破壊された機竜を、竜騎士は破壊された滑走路の補修を再開する。


「敵前線基地と爆撃機を叩き、さらにミサイル基地も叩く。作戦も何もないな」
『私たちになら可能だ』
「同意する。渓谷を抜けて一気に叩く」
『了解』
高度を下げ、機体がそのまま、渓谷に突入する。
索敵網を抜ける定石の一つだった。
狭く入り組んだ渓谷をブラック・アウトが縫っていく。
敵の迎撃に遭うことも無く、ブラック・アウトは渓谷を抜けた。
12時方向、レーダーには敵の基地が見える。
高度は0に近い数字だ。
田辺、対地攻撃モード、オン。
『対地攻撃ミサイル準備完了』
完了の言葉と同時、長距離ミサイル2発を発射。
レーダーには自機の放ったミサイル2つと敵の迎撃ミサイル2発が見えた。
対地長距離ミサイル1発が基地に命中、もう1発は迎撃ミサイルに落とされる。
「敵が上がってくる前に叩く」
『敵機竜隊、レーダーロック』
滑走路に近い機竜に向けて、中距離ミサイル発射。
命中し、火を噴く様子が肉眼で確認できた。
エリスの判断で中距離ミサイル発射。
『敵SAMサイト、敵対空砲沈黙』
「FAEを使う」
高度を上げて、基地に向けて直進。
カーソルに基地を捉えて、FAE投下。
機首を上に向けて急速上昇。
機体の後方カメラがFAEの炸裂する様子を映す。
粘性の炎が敵の基地施設と地上に残る機竜を飲み込む。
『敵ミサイル基地を確認。1時方向』
「ミサイル基地の防衛隊だ。エンゲージ」