仕留めた機械の獣(恐らくはオオカミ)から何か使えるものはないか探していると、
「オールトの雲のアリウムだな」
振り返るとパワードスーツ装備のキャラクターが立っている。
相手の声には何処か怒りが含まれていて、反射的にアリウムは予備動作に入る。
「そうだよ」
「お前、良い奴だな」
「そうかな」
「仇討ちさせてもらう」
「会話になってないよそれっ」
相手の装備は2mほどの巨大な剣だ。
それの薙ぐ攻撃を情報にジャンプして回避。
「PKKKってことかな?」
「大体その正義面が気に入らないってのがうちらの意見だ」
剣を構え直して男。
「殺すことに違いはないのにな」
「別にボクは装備やお金欲しさにやってるわけじゃないよ」
「それを正義面って言うんだよ。代わりに地位と名声が得られてる。違うか」
両手の武器を強く意識しながら、
「違うよ」
「ほぅ」
「ボクはボクが嫌だからそうしているだけだよ」
「自分勝手なのはどっちだろなっ」
アリウムは縦に来る剣を左にサイドステップして回避、左手の銃を発砲。
が、パワードスーツの装甲に阻まれて届かない。
「処刑装備だ。諦めろ」
「嫌だ」
「悪い子だな」
「良い奴から降格かな」
「減らず口はそこまでに――」
男の身に纏っていた装甲に突然、亀裂が走った。
遅れてくる発砲音。
「友軍か」
「悪いけど、SOSは出してないよ。それにボクはソロ派なんだ」
「お前に助けられた連中だろ。仲良し組が」
「君にも仲間はいるんだろ。仲良し組」
舌打ちをする動作の後、パワードスーツの周囲に光、足下には魔法陣が浮かび上がる。
アリウムの言葉に応じず、男は姿を消した。
代わりに横の茂みから狙撃手の少女が出てきた。
「邪魔しちゃいましたか?」
「そんなことはないよ。あのままだったら、ボクは殺されてただろうし」
「そうですか。なら、良いのですが」
「それにね。あのまま、話してもわからないと思うんだ」
「相互理解は難しいでしょうね」
「理解はしているから反発するんだよ、きっと」