ガーゴイルとドラゴンの討伐を終えると、後は帰投するだけになった。
「さっきの話の続き、訊いても良いか?」
「構わない。このゲームの理由だが、ヒトを理解するためだ」
「ヒトを理解するために? それなら、他にもマシなやり方があるんだろ」
「私のAIは通常のアンドロイドのボディには収まらないのだ」
「大気圏内防衛システムっていうぐらいだもんな」
「姿を見た方が早いだろう」
その言葉と同時にディスプレイには黒く大きな機体が映し出された。
細い胴体から、両の翼が後ろにすらっと伸びていて、何処か女性的な印象があった。
「これがお前の本体ってわけか」
「そういうことだ」
「俺も見せた方が良いのか?」
「何をだ?」
「面だよ、面。不平等とは思わないのか?」
「資料として見せただけだ。平等、不平等はない」
こうやって話している限りだと、感情の起伏が乏しいだけで、会話する分には問題が無い。
機械的ではあるが、機械ではない。
「どうかしたか?」
「いや、随分と人間っぽい表現にも対応するんだなと思ってな」
「対応できるようこうやっている」
「そりゃそうか」
『第403飛行隊から応援要請だ』
「内容は確認した。行くぞ」
味方の機竜のうち、余力のある連中も続き編隊を組み直す。
機竜の燃料は大気中に存在するエーテルだ。
飛行時間は機体が持つ限りはずっと、飛べる。
正面、見えるのは被弾し、煙を噴いている機竜の群れだ。
そのうちの一機がデータリンクを申請してきた。
短いやりとりの後、承諾、データ受信。
「なんだこりゃ」
『Unknown』
「だろうな」
ディスプレイに映っているのは巨大なヒトの形をしたロボットだ。
数値には全長600mとある。
武装はミサイル、機銃、レーザー。
「化け物、か」
『交戦中の機竜隊に異常発生』
機竜隊の様子を映すディスプレイに目をやる。
どの機竜も速度と高度が急激に低下している。
いや、もう一つ、低下しているものがある。
「エーテルの濃度が下がってるのか!?」
前方から突風、機体がぐらつく。
『その推測は正しい。この機体周囲からエーテルが消えた』
言葉を裏付けるように機体は静かに落下を始めた。
推力を失った機竜はただのがらくたに過ぎない。
メカニックの言葉を思い出した。
『コントロールを私に』
「どうするつもりだ?」
『推進器を切り替える』
「ユー・ハブ・コントロール」
『I have control』
ディスプレイに操作の状態が文字として流れていく。
人間には出来ない手際の良さだと男は感心する。
機体が大きく揺れた後、すぐに安定を取り戻し、機首は上を向いた。
「他の連中は?」
『残存している機竜は10機だ。緊急退避命令が出た』
「了解。基地に戻るぞ」